プレスリリース
平成22年5月24日
独立行政法人 森林総合研究所北海道支所
野生生物観測ネットワークをスタート

【ポイント】

中大型哺乳類を主な対象とした自動撮影による観測

森林管理局5地点、大学2地点、森林総研2地点で発足

調査情報を公開し、希望者にはデータ提供も。


概要
 独立行政法人 森林総合研究所 北海道支所は、数年前から北海道森林管理局森林環境保全ふれあいセンター・知床森林センター、東京大学北海道演習林、東京農業大学 生物産業学部生物生産学科などと共同で、自動撮影による中大型哺乳類の観測をすすめてきました。その結果、技術移転も進み、データフォーマットの整備・データの自動処理などもほぼ完成したことから、正式に野生生物観測網をスタートさせます。
 こうしたデータは各機関が自らその森林管理、野生生物管理、研究に活用するほか、シカやアライグマ対策、在来種クロテンの保全などのために全道的に活用します。また、北海道立総合研究機構 環境科学研究センターの協力も得て、同機関が行った調査分も含め、調査情報をホームページで公開し、公共・公益目的であれば、外部へのデータ提供も行い、積極的な活用を図ります。 今後さらに観測網を充実するため、他の機関にも参加を呼びかけます。
ホームページは下記。
http://cse.ffpri.affrc.go.jp/hiroh/photo-survey/WildlifeMonitoring/

開発の社会的背景
 野生生物に関わる問題には
1.数の増加による農林業被害、生態系への影響(例:エゾシカ)
2.外来種の侵入拡大(例:アライグマ・ニホンテン)
3.在来種の(地域的)絶滅(例:オオカミ・カワウソ・クロテンなど)などがあります。しかし、これまでは野生生物の観測体制がなかったために、問題の発見が遅れ、対策は常に後手に回ってきました。野生生物の数や分布の動向を把握する方法として、これまで人の目撃や狩猟統計に頼る方法がありました。しかし、これらは情報の遅れが伴い、偶然に頼るため、必要な時に必要な場所の情報が得られないなど限界がありました。こうした方法で観測を行うことは困難です。

経緯

 このため、森林総合研究所では自動撮影技術に着目して、これまで調査用機材、調査手法、データ処理手法の開発を進めてきました。機材については特許も取得し、商品化されました。調査については林道を利用した手法を確立し、マニュアルを整備しました。データ処理手法もフォーマットの整備と自動化を進めてきました。その最終段階が今回の観測体制の整備です。

内容・意義
 野生生物の観測を、気象観測のように一つの機関が統合的に行うことは困難です。そのため、今回の枠組みは、森林管理機関・大学・研究機関など、さまざまな機関が、自らその森林管理、野生生物管理、研究のために主体的に調査を行うことを基本としています。そうした調査を森林総合研究所北海道支所が技術的にサポートし、またデータを集中管理することで、その相互利用を図るほか、全道的な野生生物問題への活用を図ります。さらに、調査情報をWeb上で公開し、公共・公益目的であれば、希望者へデータ提供を行うことによって、一層の活用を図ります。用いている調査手法では、中型以上の哺乳類がすべて対象となる他、エゾライチョウやヤマシギ、ツグミ類・猛禽類などの鳥類も撮影されます。こうしたデータを多様な目的のために活用する機会を作ることも、今回のねらいの一つです。

今後の予定・期待
 今後、さらに観測網を充実するため、他の機関にも参加を呼びかけ、全道的な観測網の整備を進めていきます。

用語の解説
 自動撮影:野生生物の出現を体熱で検知して撮影する方法。

問い合わせ先
独立行政法人 森林総合研究所 北海道支所長 川路則友
研究推進責任者:森林総合研究所  北海道支所長 川路則友
者:森林総合研究所 森林生物研究グループ主任研究員 平川浩文
広報担当者:森林総合研究所 連絡調整室長 室谷邦彦
Tel011-851-4131 Fax011-851-4167